縦動画に16:9の素材を使うと崩れる — 拡大でごまかせない理由
横向きで作られたテロップ・トランジション・光の素材を縦動画に使うと、引き伸ばしでも拡大でも必ずどこかが壊れます。何が起きているかを説明します。
3つのやり方が、3つとも失敗します
16:9の素材を9:16の画面で使うとき、選べる方法は3つしかありません。 そのどれもがうまくいきません。
1. 引き伸ばす
横1920を縦1080幅に押し込むと、横方向だけ約3分の1に潰れます。 光の筋は角度が変わり、円は縦長の楕円になります。 グレインや埃のような「粒」は、粒でなくなって縦線になります。 文字の下敷き(帯)なら、角丸が角丸に見えなくなります。
2. 拡大して端を切る
縦をぴったり埋めるまで拡大すると、横は3倍近くはみ出します。 トランジションやフレアは画面中央に光の中心がある前提で作られているので、 中心が画面外に出ます。「光っているのは分かるが、どこから来たか分からない」 という映像になります。
3. 上下に黒帯を出す
画は正しく出ますが、縦動画で上下に黒帯が出るのは、 「これは横動画の使い回しです」という表示と同じです。 実際そうなので、視聴者は正しく受け取ります。
なぜ拡大でごまかせないのか
「解像度が足りていれば拡大しても平気」と思われがちですが、問題は解像度ではなく 構図です。素材は「画面のどこに何があるか」を決めて作られています。
- トランジションは光の中心と流れる方向が決まっています
- テロップの下敷きは左右の余白が文字量に対して設計されています。 拡大すると余白だけが増え、帯が間延びします
- 光の演出(フレア・光線)は光源の位置が決まっています。 画面外に出た瞬間、ただ明るいだけの絵になります
拡大で直せるのは大きさだけで、位置関係は直せません。
粒の素材はさらに悪い
グレイン・埃・雨のような粒の素材は、拡大すると粒そのものが大きくなります。 16:9を9:16に拡大すると粒は約3倍になり、 「フィルムの粒」だったものが「画面の汚れ」になります。 これは元の解像度がいくら高くても起きます。粒の大きさは画面サイズに対して 決まっているからです。
正しい対処
最初から縦で作られた素材を使うのが唯一の解です。 同じ効果の縦版があるなら、それを置くだけで全部解決します。
横版しか無い素材をどうしても使いたい場合は、 3番(黒帯)を選んで、黒帯を隠すデザインにするのが一番マシです。 上下に文字や単色の帯を置いて、意図した構図に見せます。 引き伸ばしと拡大は、見た人に「何かおかしい」と伝わってしまいます。
IROZORAの場合(正直に書きます)
縦版があるもの
- テロップの下敷き・帯・囲み枠(vol.1 / vol.2) … 横19点+縦19点、横16点+縦16点
- 音入りトランジション(vol.1 / vol.2) … 横8点+縦8点、横9点+縦9点
引き伸ばしたものではなく、それぞれの比率で作り直しています。 帯の余白も光の中心も、その画面で正しくなるように取り直してあります。
いま横版しか無いもの
- 重ねる素材(グレイン・ライトリーク・埃・フレア・光線・ボケ玉)… 全28点が横のみ
この記事で書いたとおり、粒の素材は拡大すると粒そのものが大きくなるので、 縦動画で使うときは上の「黒帯を隠すデザイン」に寄せるか、 画面の一部にだけ重ねる使い方をしてください。 縦専用の重ねる素材は現在制作中です。できていないものを 「できている」とは書きません。
この記事に関係する素材
TITLES vol.1 — テロップの下敷き
帯・囲み枠・下線・マーカー。合成モードを変えるだけで下敷きになるので、アルファチャンネルもプラグインも要りません。