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S-Log3の撮って出しが眠いのは正常です — グレーディングの基本手順

S-Log3で撮った映像は、白っぽくコントラストがなく「眠い」状態で記録されます。これは故障でも設定ミスでもありません。なぜ眠いのかと、どの順番で直せば破綻しないのかを説明します。

眠いのは、情報を潰さないためです

S-Log3の撮って出しは、白は白くならず、黒は黒くならず、彩度も低い。 初めて撮ると「設定を間違えたのか」と思う見た目です。これは正常です。

モニターがそのまま表示できる明るさの範囲(Rec709)は、カメラのセンサーが 受け取れる範囲よりずっと狭い。S-Log3は、センサーが受け取った広い範囲を 狭い入れ物に詰めて記録する方式です。ハイライトも暗部も 潰さずに持ち帰る代わりに、そのまま見ると全部が中間の灰色に寄ります。 つまり「眠い」は、あとで色を作るための情報が全部残っているという 状態表示です。

手順の全体像:変換 → 露出 → 色

直す順番は決まっています。逆にすると破綻します。

  1. LOG→Rec709の変換を1回だけ通す(LUTまたはソフトの色管理)
  2. 露出を合わせる
  3. ホワイトバランスを合わせる
  4. 最後にコントラストと彩度で好みに寄せる

1. まず変換。話はそれからです

眠い画のまま彩度とコントラストを手で持ち上げていくのが、一番よくある失敗です。 それらしくはなりますが、肌が濁り、ハイライトの色が転び、クリップごとに 仕上がりが変わります。S-Log3には決まった変換式があるので、 手で再発明せず、変換に任せます。方法はLOG用のLUTを当てるか、 DaVinci Resolveならカラーマネージメントで入力をS-Log3/S-Gamut3.Cineに 設定するかのどちらか一方。両方やると二重変換で壊れます (壊れ方と直し方はこちら)。

2. 露出は目ではなくスコープで合わせる

変換を通したら、明るさを整えます。目視ではなく波形(ビデオスコープ)を 見てください。Final Cut Proなら表示メニュー →「ビューアに表示」→「ビデオスコープ」 (⌘7)です。

モニターの明るさ設定や部屋の照明に目は簡単に騙されます。スコープは騙されません。

3. ホワイトバランスは「白いもの」で取る

画面の中の白いはずのもの(壁・紙・シャツ)を基準に、色かぶりを抜きます。 夕景や電球の室内など「かぶり自体が絵の内容」である場合は抜きすぎないこと。 ここまでで、いわゆる「普通にきれいな映像」になります。

4. ルックは最後。しかも少しだけ

コントラストと彩度で好みに寄せるのは最後です。順番が最後なのは、 ここだけが「好み」であって、1〜3は「正解のある作業」だからです。 正解のある作業を先に終えると、好みの調整は驚くほど少なくて済みます。

撮影側でひとつだけ:暗部にノイズが乗る問題

S-Log3の映像を持ち上げると、暗部にノイズが目立つことがあります。 S-Log3は暗部に割り当てる情報が少ないので、撮影時にアンダーで撮ると 編集では取り返せません。迷ったら気持ち明るめに撮って、編集で下げる方が きれいに仕上がります。カメラのベースISO(多くのSony機で800)を使うのも ノイズを減らす基本です。

変換の前後で何が変わるか

初めてだと「変換して正解の状態」が分からないので、目安を書いておきます。 変換前のS-Log3は、波形で見ると全体が中央付近の狭い帯に集まっています。 白いものも6割程度、黒いものも2割程度の高さにいて、上下に余白がある状態です。 正しく変換すると、この帯が上下いっぱいまで展開されます。 白は白へ、黒は黒へ。見た目では、灰色のベールが1枚剥がれて、 彩度が「上げていないのに」戻ります。眠さの正体はコントラストと同時に 彩度も詰めて記録されていることなので、変換だけで両方戻るのが正常です。 変換後にまだ全体が灰色なら、変換が当たっていません (ファイル指定ミスか、素材がS-Log3ではないか)。

よくあるつまずき

毎回この手順をやりたくない場合

1と4をまとめて済ませるのが「LOG素材用のLUT」です。変換とルックが 1本になっているので、露出とホワイトバランスさえ合わせれば仕上がります。 ただしどのLUTでも、当てる前に露出という順番だけは変わりません。 そこを飛ばすと、どんなLUTでも色が転びます。

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